もやもや
Aro/Ace界隈で少し話題になっている漫画がある。
とある1次創作の漫画家さんが描いた
「恋をしない男に恋した女の話」
簡単に説明すると
無性愛の男に恋した主人公の女が好きな男に振り向いてもらうために薬を開発して、男にその薬を飲ませて恋人気分を味わおうとする。
作者の方には、マイノリティーなセクシャルを取り上げて話題にしたいという思いもあったそうなのですが、話題にするには配慮が欠ける表現になっていることがとても残念でした。
Aro/Ace自体の認知度が低いこともあり、話題にしてもらえる事は当事者の1人としてとても嬉しいです。
きっかけが何であれ「恋愛や性愛を必要としない人」たちがいることを世間の人々にもっと知ってもらいたいです。
でも、間違った認識で広まってしまうととても苦しい思いをすることになります。
この漫画を読むことで様々な感想を抱くことだと思います。
恋愛感情が普通にある人たちにとってはただの面白い漫画で終わってしまうのでしょう。
この漫画も投稿された最初のほうのコメントを拝見すると、肯定的な意見が多く主人公の女の子が可愛いなどの意見もありました。
確かに、恋愛感情のある人たちから見れば好きな男の子に好きになってもらうために薬まで開発するなんてなんて健気な子だろうと映るの思います。
Aro/Aceの当事者からすると一番最初の入りから自分たちの存在を否定されたような気持ちになりました。
彼を恋愛脳にするための薬を彼女は作りますけど、誰かに恋愛感情って絶対に抱かないといけないものなんですかね。
作中の男の子はきっぱりと恋愛感情を持てない、キスやハグをしたいと思わないとはっきり女の子からの告白を断ります。
諦めきれない女の子は男の子を追って大学や就職先を決め、何度か告白しては同様の理由で振られ続けます。
まず、1度しっかりと断っているのに追いかけ続け、告白を繰り返しているところがとても怖いです。
恋愛感情がある人からすると諦めなければいつか好きになってもらえるかも...!などの考えがあるのかもしれませんが、Aro/Aceの当事者としては繰り返し告白されても好意にかわることはないと思いますし受け取れない感情を押し売りされているようでとても恐怖を抱きます。
「恋愛感情がない=他人に興味がない」とおもわれそうな描写も出てきます。
少なくともAro/Aceの当事者のしての私は他人に興味はあります。
他人に興味は抱くけれどもそれは、友愛や親愛の範囲であり恋愛や性愛には結びつかないだけなのです。
薬の研究費がおりたことを不思議に思った男の子が「少子化が深刻だからか…?」と呟くセリフがありますが、これは恋愛の先には性的な関係があると暗に示唆されていますよね。
Aro/Aceの界隈では恋愛志向と性的志向をわけて考えることも多く、恋愛関係は望むが性的関係は望まない人もいてます。(逆に性的関係を望むけど、恋愛関係を望まない人もいてます。)
男の子はそもそも他者に性的欲求や恋愛感情を抱かない無性愛の人として描かれていることを考えると、たとえ薬を飲ませて恋愛脳になったとしても性的行為を行うのかには疑問を抱きます。
性的行為を愛情の表現ととらえている人がマジョリティの世界では伝わりにくいかもしれませんが、たとえ好きでも性的行為には及びたくないと思っている人がいることを知って欲しいです。
個人的には、作品全体に漂う「好きだから何をしても大丈夫」という好きの言葉を免罪符のように扱う描写が気になりました。
好きだから追いかけ続ける。
好きだから薬を飲ませて自分のことを好きになってもらう。
好きだから気持ちの伴わない行為は嫌だ。
好きという気持ちは尊重されるべきだと思います。
でも、その気持ちを必要としていない人にぶつけてしまうと、ぶつけられた側は扱いに困りますし恐怖へと変わってしまいます。
1人1人抱く気持ちは様々ですし、それを薬を飲ませてまで変えてしまおうというのは少し暴力的な表現だと思います。
まだまだ世界は恋愛感情を抱く人たちが多数派となっています。
その中で、恋愛感情を抱かない私たちは「いつかいい人が現れるよ」や「いつまでたっても子供だね」などまるで恋愛感情を持たないことが異常であるかの用に扱われることがあります。
恋愛感情を抱けないことに悩む人もいる中で、創作の中とはいえ薬を飲めば治せるように表現するのは私たちのことをとてもないがしろにされたように感じます。
作者さんのセクシャリティがわからないので憶測でしか書けませんが、
もし、マジョリティの立場でこの漫画を描いたのだとしたら配慮に欠けていたとしか思えません。
この漫画について厳しい意見が出るのはセクシャリティの事を交えて漫画を描いたからと理解されているみたいですが、どんな題材を扱うにしろ自分が経験や体験したこと以外を描く場合は念入りに調べて描くべきと個人的には思います。
Aro/Aceの当事者が少ない現状ではこの少ない人の中に漫画や小説を生み出す人はさらに少数だと思います。
だから、マジョリティの方たちが題材としてAro/Aceを取り上げて作品を作ってくれる事はとても嬉しいです。
こんな、独り言をつらつら書き並べて発信するブログよりも何百、何千、何万と沢山の人にAro/Aceを知ってもらえる機会になるでしょうから。
だからこそ多くの人たちに間違った理解のされ方をしない表現を心がけてもらえると嬉しいのです。